終始圧倒され完敗、窮地に立たされる/大学選手権 第1戦 同志社大戦
大学選手権初戦の相手は、関西を制し勢いに乗る同志社大だ。開始早々に連続トライを奪われると、その後も接点やセットプレーで圧倒され思うようなアタックを継続できない。ディフェンスでも、相手の鋭く大胆なパス回しや、快足WTBに対応できず失点を重ねてしまう。後半にFL廣川が1トライを返すのがやっと、結果は8-36と6トライを献上しての完敗だった。準決勝進出の厳しくなったが、わずかな可能性を信じて慶大は戦い続ける。
第52回全国大学ラグビーフットボール選手権大会
セカンドステージ第1戦vs 同志社大
2015/12/20(日)14:00K.O.@秩父宮ラグビー場
得点
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慶大
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同志社大
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前半
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後半
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前半
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後半
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0
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1
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T
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3
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3
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0
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0
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G
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1
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2
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1
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0
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PG
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0
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0
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0
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0
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DG
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0
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0
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3
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5
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小計
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17
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19
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8
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合計
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36
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得点者(慶大のみ)
T=廣川
PG=矢川
出場メンバー
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ポジション
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先発メンバー
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交代選手
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1.PR
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加藤 宏(経4・慶應)
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→17 細田 隼都(商2・慶應)
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2.HO
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佐藤 耀(総4・本郷)
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→16 松岡 大介(環3・小倉)
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3.PR
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出口 桂(商4・明善)
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→18 大塚 健太(環4・國學院久我山)
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4.LO
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辻 雄康(文1・慶應)
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→19 永末 千加良(法2・慶應)
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5.LO
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佐藤 大樹(総2・桐蔭学園)
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6.FL
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廣川 翔也(環3・東福岡)
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7.FL
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鈴木 達哉(環3・茗溪学園)
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8.No8
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岩本 龍人(政4・國學院久我山)
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→20 松村 凛太郎(商2・慶應)
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9.SH
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南 篤志(総4・清真学園)
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→21 江嵜 真悟(商1・小倉)
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10.SO
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矢川 智基(環4・清真学園)
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→22 古田 京(医1・慶應)
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11.WTB
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清水 祐輔(環3・明和)
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12.CTB
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青井 郁也(商2・慶應)
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13.CTB
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田畑 万併(環4・桐蔭学園)
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14.WTB
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金澤 徹(商2・慶應)
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15.FB
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澤根 輝賢(総4・佐倉)
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→23 佐野 航太(政4・慶應)
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いきなり出鼻をくじかれた。キックオフを敵陣でターンオーバーされると、雨にも関わらず素早く展開する同志社に、ディフェンスの整備が追い付かない。俊足が揃うBKに振られ、前半2分に早くも先制トライを奪われる。さらにファーストスクラムでターンオーバーを許し、セットプレーでも厳しい状態に。9分には、自陣5mで執拗にスクラム勝負を仕掛けられ、止めきれずに0-10となる。立て直す間もなく、14分には同志社大のセブンスズ日本代表・WTB松井の個人技でトライを奪われる。キックも決まり0-17に。まるで秩父宮がホームであるかのように、野太い応援が響く同志社スタンド。対照的に慶大は、「立て続けに取られ、厳しい状況」(金沢HC)に、前半早々に追い込まれてしまった。流れを取り戻したい慶大は、ここから敵陣でのプレーを継続していく。同志社大のブレイクダウンへの素早い寄せに対して、球出しのテンポを改善しマイボールをキープできるようになる。FL鈴木、CTB田畑を中心に縦への突破を繰り返す。23分に得たPGを矢川が確実に決め、3-17と反撃の狼煙を上げる。その後も敵陣で長く攻め入るが、要所でのハンドリングエラーが響き点差を縮めることができない。前半を終え3-17と、点差をつけられ折り返す。
ハーフタイムを契機に一気に逆襲といきたい慶大。だが再び立ち上がりをすくわれた。WTB清水がシンビンで数的不利に陥ると、ピックアンドゴーを多用し、ハイテンポで攻める同志社大に振り回される。後半2分にラインブレイクを許しトライ、3-24となってしまう。後半6分にはDGへのチャージをWTBに押さえられ、3-31と大差をつけられる展開に。ただここで試合を捨ててはいけない。「点差が開いても諦めるな」(田畑)と、ボールキャリーの低い姿勢を意識してアタックしていく。途中出場のSH江嵜も、シンプルな速い捌きで奮闘した。WTB金澤が快足を飛ばして一気に敵陣に進入すると、ラインアウトからFL廣川が待望のトライ。24分に8-31とする。しかし逆転するには、あまりにも時間が足りなかった。直後の26分に、またも簡単にインサイドブレイクされ36-8になる。その後もアタックにおいてフェーズを重ねることができず、自慢の走力を生かせない。ポイントを作りきれないまま、ノーサイドを告げるホイッスルが響いた。結果は8-36、6トライを奪われての完敗だった。
同志社大のプレーが素晴らしかった。雨の中、BK・FW関係なく鋭いパス回しと展開で慶大を揺さぶった。ブレイクダウンへの寄せやボールへの絡みも的確で、「ジャッカルもすごく良かった」(廣川)と何度もターンオーバーを食らった。対する慶大はボールの扱いに軽さが否めず、敵陣に攻め入っても、ハンドリングミスからマイボールの継続がままならなかった。スクラムをはじめとしたセットプレーでも圧倒され、慶大は自分たちのアタックを出せずに受け手に回ったと言える。ボールキャリーの姿勢や、接点へのサポート、集散も甘かった。CTB青井の「今回も切り替えることが出来ませんでした」の言葉通り、一度崩されると中々立て直せないチームの雰囲気も心配だ。失敗を恐れずにチャレンジすることも大切。たとえ失点しても、目標とするラグビーに立ち返って果敢にアタックしてほしい。
対抗戦5位の慶大にとって、今回の負けは非常に厳しいものである。しかし下を向いている時間はない。目標の「打倒帝京・日本一」を果たすには、まず準決勝に進まないといけない。「まだ可能性は残っている」(SO矢川主将)。プレーの技術は急速に向上しないかもしれない。しかし、選手の熱い想いが修正を促し、短時間で著しく成長できるのが学生スポーツの醍醐味だ。あと2試合、強敵相手にボーナスポイントをとっての勝利が最低条件となる。今回は課題を明確に突きつけてくれたと前向きに捉え、大学選手権が終わるまで全力で戦い抜いてほしい。慶大選手が持てる力を最大限発揮すれば、強敵も食えるはずだ。崖っぷちに追い詰められた慶大が、奇跡を起こすと信じたい。
【ケイスポ的MOM】今こそ必要な4年生の突破力! CTB 田畑 万併
大学選手権の初戦で完敗を喫し、準決勝進出へ追い詰められた慶大。こうした絶体絶命の苦境で、最も頼りになるのは4年生の経験と底力だ。今年のチームの顔として、何度も力強い突破をみせてきた田畑。同志社大戦でも、何とか流れを変えようと縦へのドライブを繰り返し、最後まで勝利への執念を出し続けた。田畑のような強いランナーに敵を引き付けることが出来れば、外に金澤や青井ら速い選手が抜けるスペースが広がる。次戦の大東大戦では今日以上に縦への意識を高め、大東大のお株を奪う強力なゲインを見せてほしい。ディフェンスでも屈強な外国人選手を止めるために、田畑のフィジカルの強さは不可欠だ。「このプールは番狂わせが起きると思っています」(田畑)。慶大でプレーする時間もあとわずか。4年生を中心に結束し、最後に大逆転劇を演じたい。
(記事・砂川昌輝)
ヘッドコーチ、選手のコメント
金沢ヘッドコーチ
見ての通り、同志社大のパフォーマンスが明らかに慶大よりも良かったです。特に私たちはタックルでプレッシャーをかけたかったですし、雨のなかで回させないようにしたかったです。しかし逆にプレッシャーを受けてしまい、また相手のハンドリングが素晴らしかったことで、前半立て続けにトライをとられてしましました。そこで選手が厳しい状況になってしまったと思います。定期戦の時とでは、特にディフェンスとブレイクダウンに違いを感じました。天理戦の後からディフェンスでのパフォーマンスが更に上がっていました。当然予期して準備していましたが、それ以上に良いプレーをされました。あとは慶大のボールキャリーの姿勢が高くて、うまく攻撃をつなげることが出来ませんでした。
SO矢川智基主将
(今日を振り返って)完敗でした。ブレイクダウンで負けてから、全て後手になって受け身になってしまいました。(相手のプレッシャーが想定より強かったのか)そのこともありましたし、僕たちの力が発揮できなかったこともあります。(最初に流れを掴めなかったことが原因か)そうですね。入りは大切にしたかったのですが、上手くいかなかったです。(印象に残ったシーンはあるか)インサイドブレイクが多かったですし、外も走られてしまいました。特徴的なシーンというよりは、ゲーム全体で反省点が多いです。(矢川選手が走る場面が多かった)逆に言うと、外が空いてなかったということなのですが、自分が行くのがベストだと判断した場面は走り切りました。(大学選手権が続きますが)まだ可能性は残っています。次は全く違う相手ですが、一週間しっかり取り組んで、序盤から自分たちのラグビーが出来るようにしていきます。
LO佐藤大樹
(試合を振り返って)自分たちのラグビーが出来ませんでした。相手のブレイクダウンやボールへの絡みが上手くて、自分たちのアタックが出来なかったです。(相手のディフェンスのプレッシャーは大きかったか)そうですね。ボールキャリーで絡まれてラックで良いテンポでボールが出なかったです。(自身のプレーを振り返って)全体的にはディフェンスが良くなかったと思っています。抜けたシーンもたまたまだと思っていて、アタックでも良いボールキャリーがあまりできませんでした。(次戦に向けて)自分たちのラグビーをやるために、今日の課題だったブレイクダウンや、ボールキャリーのところを練習から声をかけて意識して修正していくしかないのかなと思います。
FL廣川翔也
(今日の試合を振り返って)完敗ですね。(今日のゲームプランはどのようなものだったか)同志社大はいいアタックをして来るので、レッグタックルとラインスピードを上げることが今週のキーワードでした。(廣川選手自身、今日の試合ではどれくらいタックルに入れたか)目の前に来た相手は止めることが出来ました。でも試合は負けているので、まだまだです。(ブレイクダウンでは相手にターンオーバーを許す場面が目立った)相手は人数をかけて来て、ジャッカルもすごく良かったです。僕自身、もっと早くという意識を持たないといけなかったんですけど、相手の絡みの方が早かったです。(慶大のトライの場面、最後にグラウディングしたのは廣川選手だった)(江嵜)真悟が一回突っ込んでくれて、前が空いたので自分は(地面に)置くだけでした。(来週の大東大戦に向けて)まだ相手のことは分からないので、日吉で一から頑張るだけです。
(今日の試合を振り返って)完敗ですね。(今日のゲームプランはどのようなものだったか)同志社大はいいアタックをして来るので、レッグタックルとラインスピードを上げることが今週のキーワードでした。(廣川選手自身、今日の試合ではどれくらいタックルに入れたか)目の前に来た相手は止めることが出来ました。でも試合は負けているので、まだまだです。(ブレイクダウンでは相手にターンオーバーを許す場面が目立った)相手は人数をかけて来て、ジャッカルもすごく良かったです。僕自身、もっと早くという意識を持たないといけなかったんですけど、相手の絡みの方が早かったです。(慶大のトライの場面、最後にグラウディングしたのは廣川選手だった)(江嵜)真悟が一回突っ込んでくれて、前が空いたので自分は(地面に)置くだけでした。(来週の大東大戦に向けて)まだ相手のことは分からないので、日吉で一から頑張るだけです。
SH江嵜真悟
(今日の試合を振りかえって)終始相手ペースだったので、そこで何かプレーをして流れを変えていかなければならなかったんですが、それが出来なかったのが悔しかったです。(相手チームの印象は)ブレイクダウンがしっかり整理されていて、そこで簡単に相手のテンポが作らせてしまったのが駄目だったと感じています。(劣勢での出場でしたが流れを変えるためにどのように攻撃を組み立てようと考えていたか)近場でゲインできると相手の外側のディフェンスもギャップができてくると思ったのでそれを狙ったのですがあまり上手くいかなかったです。(ブレイクダウンでの相手のプレッシャーは大変強かったように感じたが、球出しもやりづらかったか)やりづらい部分もあったのですがそこを捌くのがスクラムハーフの仕事なので、一層努力していきたいです。(来週の大東戦に向けて意気込みを)ファイナルステージ進出のためには勝つことしか残されていないので、勝つことだけ意識して、一週間練習して勝ちたいと思います。
CTB青井郁也
(今日を振り返って)入りのサイン出しで、FWとBKの連携がうまく取れず、ミスをしてしまったことが一試合を通した悪い流れに繋がったのだと思います。(前半で3トライ取られたが)1トライを取られたところで切り替えなければならなかったのですが、青学大戦に続いて今回も切り替えることが出来ませんでした。(切り替えるために取り組まれてることは)インゴールで話す場面やBKで話しているときに、コミュニケーションを取ってはいたのですが、改善することは出来なかったです。(相手のコンタクトは)コンタクト面は強かったです。そこで食らってしまい、ブレイクダウンでも圧倒されてしまって、僕たちがブレイクダウンにかける人数が増えてしまい、アタックのシェイプが取れていなかったので、そこがテンポの悪くなった理由の一つだと思っています。(インサイドブレイクについては)ノーインサイドブレイクを目標に、1年間通して練習してきたのですが、まだ目標に達せていないです。(雨の影響は)ハンドリングの面で、球が滑ることはありました。ただ、雨を生かしてディフェンスで相手にプレッシャーを与えることが出来なかったのが反省点です。(今後に向けて)2試合ボーナスポイントをしっかり取って勝って、正月越え出来るように頑張っていきます。
CTB田畑万併
(今日の試合までの準備は)自分たちの持てる100%のプレーを出せるように練習してきました。(同志社大に対しての対策は)速いWTBや展開についていけるように、早くセットしてディフェンスするところに力を入れてきました。(試合中の相手のプレッシャーは)特にセットプレーで同志社大が勝っていたので、そこでプレッシャーを感じました。そこでその後のプレーが上手くいかなくなったので、セットプレーの修正や、相手が良かったときに自分たちがどうアタックするかが課題になりました。(周囲の選手への声掛けは)点差が開いても諦めるな、ということです。あとは慶大の持ち味であるディフェンスやタックルに立ち返って、そこから慶大の流れにしようとしていました。(ここからどのようにチームを立て直すか)準決勝へ行く可能性は低くはなりました。しかし大東大が筑波大に勝ったように、このプールは番狂わせが起きると思っています。自分たちが2勝することを目標にして、明日からやっていきます。