2015年12月31日木曜日

12月27日(日)筑波大学戦 マッチレポート

【ラグビー】矢川組・魂のラストステージ。敗戦も、想いは来季に/大学選手権 第3戦 筑波大戦


ピッチサイドからチームを見守った矢川主将

同志社大・大東大の敗戦で、セカンドステージ敗退が決まった慶大。最終戦は筑波大戦だ。黒黄ジャージーを身にまとい、「大会に爪痕を残したい」(CTB田畑)。一年間積み上げてきたフィットネスを武器に、試合のテーマは80分間走り続けること。キックは多用せず、走りながら全員でパスを繋いで筑波大の壁をこじ開ける作戦だ。しかし、前半は筑波大にペースをつかまれ無得点で折り返す。後半も流れを変えられない。ブレイクダウンの弱さが響き、ボールを保持できない慶大。試合を通して、得点シーンは一度のみ。7-64と大差をつけられ、矢川組の戦いは幕を閉じた。


第52回全国大学ラグビーフットボール選手権大会
セカンドステージ第3戦 vs 筑波大 
2015/12/27(日)11:40K.O.@秩父宮ラグビー場

得点
慶大

筑波大
前半
後半

前半
後半
PG
DG
小計
26
38
合計
64

得点者(慶大のみ)
T=金澤
G=古田

出場メンバー
ポジション
先発メンバー
交代選手
1.PR
加藤 宏(経4・慶應)
 →17 長尾 昴(環3・茗溪学園)
2.HO
佐藤 耀(総4・本郷)
 →16 松岡  大介(環3・小倉)
3.PR
八木 悠太朗(商4・慶應)
→18 出口  桂(商4・明善)
4.LO
辻 雄康(文1・慶應)
→19  永末 千加良(法2・慶應)
5.LO
佐藤 大樹(総2・桐蔭学園)

6.FL
廣川 翔也(環3・東福岡)

7.FL
鈴木 達哉(環3・茗溪学園)

8.No8
徳永 将(商4・慶應)
→20 岩本 龍人(政4・國學院久我山)
9.SH
南 篤志(総4・清真学園)
 
10.SO
古田 京(医1・慶應)
→21 今泉 宏健(総2・清真学園)
11.WTB
吉迫 雅俊(商3・慶應志木)

12.CTB
古橋 純(理4・千種)
 →22  木口 俊亮(経3・仙台三)
13.CTB
田畑 万併(環4・桐蔭学園)

14.WTB
金澤 徹(商2・慶應)

15.FB
中村 敬介(経4・慶應)
 →23 佐野 航太(政4・慶應)


対抗戦初スタメンのSO古田
対抗戦初スタメンのSO古田
慶大のキックオフでスタート。開始1分に22メートルラインからマイボールラインアウトを成功させると一気に攻め込む。連続攻撃で圧倒し、先制まであと一歩だ。しかし、反則から相手スクラムを献上すると、一気に陣地を戻される。10分にも、スクラムからチャンスを得ると、LO佐藤やFL鈴木などFWを中心に展開しゴールライン際まで攻め込む。しかし、ゴールを目前にして密集の中での反則が相次ぎ、得点に繋げられない。この局面で取り切れなかったことを最後に、慶大の攻撃の手は止んでしまう。15分には、日本代表のWTB福岡に先制を挙げられる。この後も、密集からのトライや、ピッチを30m駆け抜けてのトライなど、様々な形で得点を重ねられ、筑波大に圧倒される。そのまま無失点で抑えられ0-26で折り返す。


最後まで粘り強く走るCTB田畑
最後まで粘り強く走るCTB田畑
流れを変えたい後半。しかし、ハーフタイムを経ても筑波大の勢いは止まらなかった。後半3分、6分、11分に立て続けに得点を決められ、点差は開いていく。ただ、選手たちは諦めない。筑波大の後半2本目のコンバージョンは、FL廣川の魂のキックチャージで得点を免れた。キックは使わず、走りながらボールを繋ぎ陣地を取りに行く慶大。接点でプレッシャーを受けて何度かターンオーバーされながらも、愚直なタックルで好機を伺い、全員でゴールラインを目指す。試合が動いたのは29分。ゴールポスト前のスクラムからボールを出すと、SH南がランコースを確認しながら後ろへパス。WTB金澤がスペースを確実にゲインし、トライを決めた。だが、あくまでも勝利を目指す選手たちに笑顔はない。一息つく間も惜しんで素早くリスタートし、積極的なアタックを続ける。疲労もあるなか、熱意でボールを繋ぐ慶大。しかし、筑波大のディフェンスを超えることは出来ず、ターンオーバーされて試合終了。最終戦を、7-64で終えた。


課題としていた、立ち上がりの悪さとブレイクダウンの弱さを徹底的に突かれた。筑波大が先制を挙げたのが開始15分。その後は、流れをつかめない慶大を尻目に前半だけで連続3トライを決めた。ブレイクダウンでは、慶大の接点へのサポートの遅さを見越して、ダブルタックルで一人目のボールキャリーを確実に仕留め、ターンオーバーを繰り返した。課題を自覚し準備をしてきた慶大だが、筑波大のパフォーマンスがより勝った。大学トップレベルの練習量を重ねてきた一年だった。最後の試合でベストプレーが発揮できなかったことは、残念でならない。ただ、希望は未来へ繋がれる。どの試合よりも「走り続けた」80分間。疲労から足の止まる選手もいるなか、四年選手が見せた、ノーサイドの瞬間まで粘り強く走り続ける姿勢。最後は“熱意”が何よりも強い武器となることを後輩選手に背中で語った。どんな時でもひたむきさを欠かさなかった矢川組。そのDNAは次のチームへと受け継がれる。


【ケイスポ的MOM】借りは来季に返す・FL廣川

愚直なタックルが持ち味
愚直なタックルが持ち味
接点で一番体を張る。レッグタックルで相手を倒すと素早く立ち上がり、次の密集にサポートへ。誰よりも豊富な運動量で、慶大ディフェンスを支える廣川。今秋からは、ボールキャリーとしても活躍の幅を広げた。彼を突き動かすのは、謙虚さとたゆまぬ努力。どんなに活躍した試合でも、「僕はまだまだ」「また一から頑張らなければ」と決して満足することはない。試合後にピッチの隅で一人居残り練習する姿もよく見られる光景だ。最後まで先頭に立って戦うも、「ラグビーはやはり甘くないと痛感させられた」本試合。借りを返すのは来季だ。チーム1の努力家が、慶大の新たな時代の舵を取る。

(記事・長尾里穂)


コメント
金沢ヘッドコーチ
(試合を振り返って)公式戦最後の試合だったので、「走り続ける」ことをテーマに臨んだのですが、特にアタックの面で慶大らしいラグビーが出来ませんでした。筑波大のプレッシャーを受けて、何度もターンオーバーをされてしまったことが一番の反省点です。ただ、四年を中心に一生懸命取り組んでくれて、次の代に残せたゲームになったのかなと思います。(フィジカルで負ける部分もあった)接点で大きく負けたのは、フィジカルの弱さというよりも当たる姿勢が相手よりも高かったからだと考えています。特にボールキャリーが高かったと思っています。そこを修正しようと後半に臨んだのですが、すぐに変えることは出来ませんでした。来季への課題として持ち越したいと考えています。

矢川 智基 主将
(試合前にチームに話したこと)今日は試合には出られなかったのですが、ピッチサイドに立つことができたので、四年に向けて、後輩に何か残せるようなプレーをしようと話しました。また、厳しい状況や激しいコンタクトを楽しんで試合をしようとも声を掛けました。(外から見て感じたこと)結果としては惨敗で、大学選手権もほぼ惨敗でした。このような結果で終わったことは、一年間の頑張りがまだ足りなかったのかなと受け止めています。(四年間を振り返って)一年から出られていた選手ではないですし、苦しい思いをして黒黄のジャージを着ました。喜怒哀楽のあった、良い四年間だったと思っています。結果に繋がらなかったことが一番残念です。(ファンの皆様に向けて)結果で恩返しすることは出来なかったのですが、今年の悔しさを踏まえて後輩たちが来年頑張ってくれると思います。引き続き慶大蹴球部の応援をお願い致します。

PR 八木 悠太朗
(試合を振り返って)最後の試合ということで、かなり気持ちは入っていたのですが、筑波大のディフェンスにやられて、慶大は攻めあぐねていました。気持ちだけでは超えられない壁にぶつかったという感じです。(八木選手自身のプレーを振り返って)セットプレー、特にスクラムを安定させようということを意識していて、スクラム自体は良かったと思うのですが、ラインアウトの所でやられてしまったと思います。手を負傷してからはあまり自分らしいプレーをすることが出来なかったのですが、それまでは低くタックルに入ったり、慶大らしいプレーをすることが出来ました。(筑波大の印象は)前回勝った相手なんですけど、筑波大の特長であるブレイクダウンでやられてしまって、こちらが持ち込んだボールも、相手2、3人に寄られて取られてしまうということが多くて、ブレイクダウンでやられてしまった感じがありました。(ラグビー生活最後の試合を終えて、今の心境は)10年間ラグビーをやってきたので、感慨深いところはあります。また明日、4年生だけの試合が残っているので、僕は出ないですが、応援に全力を懸けてなんとか勝ってもらって、最後は勝って終わりたいです。(4年間を振り返って印象的な場面は)去年まではなかなか試合に出られなかったので、スタメンで秩父宮の舞台でプレー出来たり、対抗戦で最後の青学大戦以外は全部出られたことは良かったなと思います。(後輩にメッセージはありますか)僕みたいに、小柄なPRだったり、ポジションを変更してPRになった選手が増えてきたので、頑張ってほしいですね。(最後にファンの皆様にメッセージを)僕がここまで来られたのも、サポートしてくれる皆さんが居てくれたおかげなので、本当に感謝の気持ちで一杯です。

FL 廣川 翔也
(試合を振り返って)前半の入りはいい流れで進めたのですが、僕が不用意な反則をしてしまってから流れが悪くなってしまったと思います。(流れを立て直すことが出来なかった)前半は、僕の感覚ではまだまだいけると思っていました。後半再び取られていくうちに、どこかで心が折れてしまったのかもしれません。(ブレイクダウンで競り負けた)筑波大はブレイクダウンのプレッシャーが本当に強かったです。僕らも今シーズン追及してきたのですが、まだまだ足りなかったのだと思います。勢いのあるディフェンスに対応できずターンオーバーされることは今シーズン多かったです。(最後まで走っていた)もう少し進めた部分もあったと思います。試合の最後の方は、足が止まってしまった感覚がありました。(キックチャージは)相手SOの亀山選手の助走がゆっくりだったので、試合の初めから狙っていました。(四年の引退試合だった)矢川さんなどは、入学前からお世話になっていました。最後、四年生と笑って終わりたかったなと思っていました。負けてしまって今、とても悔しいです。(今後に向けて)去年一昨年とベスト4に進めたのですが、今年は敗退してしまって、ラグビーはやはり甘くないなと痛感させられました。これを糧に、今から少しずつ来年のことを考えていきたいです。

FL 鈴木 達哉
(試合を振り返って)最初から筑波大のプレッシャーを受けていて、ボールを継続することができず、ディフェンスでもボールを取り返すことができず、ずるずるといってしまいました。(試合前には主将からどのような声掛けがあったか)自分たちのラグビーを最後までしようということです。そのことを一週間続けて練習してきましたし、試合前もその話をしました。(接点でのプレッシャーは)個人的には、前に出ることができたシーンもあったと思います。ただ全体として、ボールをキープするときのブレイクダウンの接点ですごくプレッシャーを受けていました。その点で筑波大は強かったと感じています。(この秋はどのようなシーズンだったか)春から積み上げてきたものを夏にしっかり伸ばして、秋初戦は筑波大に勝ち、滑り出しはよかったと思います。ただシーズン深まる中で、相手もどんどん強くなって自分たちがそこまで練習で追いつけなかったのが敗因だと思います。厳しい戦いは続きましたが、四年生は前を向いて僕たちを引っ張ってくれて頼もしい先輩でした。

No.8 徳永 
(今日の試合にかける思い)二つあって。まず一つに今年積み上げてきた自分たちのラグビーというのを最後まで貫き通したいという思い。また、見ている後輩や同期に何か残そうという心持ちで臨みました。(どのような対策をしましたか)筑波大のブレイクダウンが強いことは分かっていたので、そこでしっかり戦おうという話はしてきました。ただ、特別に対策というより、今年一年間やってきたラグビーをもう一度しっかり出そうということと、怪我人が先週までで何人か出てメンバーが変わったので、その部分の確認を行いました。(試合を振り返って)筑波大のブレイクダウンに負けてしまって、そこでプレッシャーを受けてしまった結果、自分たちのタックルやディフェンスで、後手後手に回ってしまったなという印象です。(準備してきたことで今日の試合でできたことは)ある意味では全部できたと僕は思っています。ただ細かい質の部分がまだ足りなくて、結果として負けてしまったという ふうに思っています。(最終戦で復帰できました)怪我ばかりでチームに迷惑をかけてしまって申し訳なかったのですが、最後こうして信頼されて出していただいて、本当に感謝しています。(今シーズンを振り返って)新しい体制のもと新しいラグビーを少しずつ積み重ねてきたのですが、最後は大学選手権3戦全敗ということで、積み上げがまだまだ足りなかったと思います。後輩たちは僕たち以上のものを積み上げてくれると思うので頑張ってほしいです。

SH 南 篤志
(今日が最後の試合となっていたなかで、どのような準備をしてきたか)4年生として、少しでも後輩たちに慶大の9番がどのようなことをしなくてはいけないかを、伝えたかったです。ただ結果はあまりよい結果ではなく、悔しいです。後輩たちはこれを見て、次につなげてくれればと思います。(今日の試合ではSHの登録が一人でした)はい。80分通して出場すると分かっていたので、80分出し切ろうという気持ちで準備はしてきました。最後はちょっと走れなくなってしまったのですが、これも今の自分に足りないところかと思います。幸い僕の場合は次のステージがあるので、そこでもっと成長して姿を後輩たちに伝えられるように頑張りたいと思っています。(慶大での4年間を振り返ってみて)正直辛いことが多かった4年間でした。勝利という貴重な経験をしたり、すごく悔しい思いをしたり、色々な経験をさせてもらった4年間でもあります。すごく意味のある4年間でした。その経験を生かして、社会人でも頑張っていきたいです。

SO 古田 
(初のA戦でのスタメン出場でしたが)今日は何もできなかったです。(今日の試合を振り返って)今日の試合は力負けでした。その試合の中で自分は何もできなかったです。ただそれだけです。(前半は風上であったがその中で意識したことは)自分たちのラグビーをしようと言っていたけれどもできなかったので、これから自分たちがちゃんとやっていかなければいけないと思います。(ブレイクダウンの印象は)筑波は強かったですけれども、自分たちの練習不足でもあるので、そこも来年から修正していきたいと思います。(この試合の経験を来年以降にどう生かすか)もう一回自分たちの目指すところはどこかと、それは日本一であると、チームで一年間ずっとやっていかないとできないと思うので、この試合を経験した自分から取り組んでいきたいと思います。(今シーズンを振り返って)本当に試合に使っていただいていい経験ができて、これから自分の目指すところが見えたと思うので、4年生やHCにも感謝してこれから頑張りたいと思います。(来シーズンの目標は)本当に少しでも日本一に近づいていかなければならないので、まずは自分から個人としていいプレイヤーになれるように頑張りたいなと思います。

CTB 田畑 万併
(今日の試合を振り返って)前半の最初の方はペースを守ってアタックするシーンがありました。慶大らしいラグビーということで順目に順目に走って相手に走らせるというイメージだったんですが、ブレイクダウンであったり個人のヒットのクオリティだったりで前に出られずに走り勝つことができなかったというイメージです。(筑波大のダブルタックルについて)筑波大はダブルタックルがすごく上手くて、そこでやられてしまったなという感触です。(大学選手権を振り返って)早慶戦からずっと同じような入りで最初から流れが持っていかれてしまうのを修正できなかったのが一番の課題だと思います。(4年間を振り返って)厳しいこともありましたが、黒黄を着て、150人分の思いを背負って試合に出られたことは慶大でしか経験できないことです。慶大に入って来る有名選手は多くはないのですが、その分厳しい練習で鍛えられたということは社会人になっても通じていくところがあるのかなと思いました。負けてしまいましたが、いい思い出になりましたし、僕はまだラグビーを続けるのでこれからも頑張っていきたいと思います。(後輩に向けて)慶大は恵まれたチームなんですが、そういった中でも環境や練習方法にどうしても文句が出てしまうことがあります。そういったところを自分の中で抑えて、逆に上手く利用して僕たちより強くなっていってほしいです。これは僕たちの課題でもあったので後輩にはぜひ乗り越えてほしいですし、後輩の後輩にも伝えてほしいです。

WTB 金澤 
(前の試合から修正した点は)自分たちのラグビーの型を確立していこうとしたのですが、やはり時間が足らなかったかもしれないです。(試合の目標は)一年間自分たちがやってきたことをやろうとチームで話し合いました。(試合を振り返って)完敗でした。やりたいことが全然できなくて、スコアが開いていくプレッシャーにもやられました。(トライも決めたが、ランプレーの出来は)あのトライもサインプレーで、自分で道を開けたわけではないので、まだまだこれから練習を重ねていきたいと思います。(BK全体として、単独で突破を試みて相手にブロックされる場面が多かった)カウンターの場面で相手の枚数に対してこちらのそれが全然足りていなくて、自分一人のフィジカルでは突破できなかったです。(大学選手権全試合を総括して)結果全敗という形になって、やはり悔しさが残るので来季はもっと頑張りたいと思います。(来季への意気込みを)来季は一人でも多く突破できるような選手に成長して、またこの舞台に戻ってきたいと思います。